質問型営業

入社4年目。仕事を一人で進められる程度に慣れつつ、後輩の指導もするようになった。最近の悩みはそこにある。

後輩とは言え、年下であるとは限らない。勤続年数が自分の倍くらいある先輩も時として自分の部下になることがある。そしてやはりナメられる。ジムバッチ1つでレベル30まで聞いてくれるような世界ではないのだ。その先輩にはナメられた分のお返しに色付けて「熱心に」指導してあげたら、見事に無断欠勤1週間かまされた。うーむ、難しい。

そんな私を見かね、多部署の部長が相談にのってくれた。「質問型営業」というテクニックがあるという。顧客情報を引き出し、ニーズを把握して、その顧客に何が必要なのかを知ることで、より親密なやり取りをするというものだ。しかし出会ったばかりの、信頼も何もない状態であれこれ質問してみても、「なんでお前さんみたいなとこにそんなこと教えなあかんねん」と口を閉ざされるばかりだ。第1に行うのは「あなたのことが好きだ」という好意をもって関わることだという。「あなたのために私はこんなことができる」、「あなたのこんなところが私は好きなのです」まるでラブゲームではないか。「女相手にはそういうの得意なんですけどねえ」と言うと、そんなもんやと言われた。そんなもんなんですかな。仕事と恋愛せえっちゅうようなもんか。

しかし、同じ後輩でも女性社員にはわりかしちゃんと指導できていたな、とふと思った。もちろん個々の能力の差はあるのだろうが(彼女らはみな意欲をもって自分から動けるタイプの人であった)。

嘘でやってもバレるという。あくまで本気で好きになるのだと部長は言った。うーむ、たしかにナメられたらあかんのスタンスでは、信頼関係など構築できるはずもないか。

正論で人は動かない。人を動かすのは「感情」だ。頭ごなしに「お前がやらな俺が困るからやれ」と命令してもモチベーションは上がらないし能率も下がる。自分以下の世代は特に顕著だ。「やろう」と思わないと動かないし、その「やろう」と思うきっかけを他人ないし何かしらに求めている。言われたことを「はい!」と返事してさっと動く。まあ至極当たり前のことだ。しかしそれが出来ない甘ちゃんは世にそこそこ蔓延っている。部長曰く彼らを動かすには「コミュニケーション」だとヒントをくれた。何気ない対話、普段いつもの仕事を積み重ねて信頼を得ていかなければならない。ナメられないかつ、「いいやつ」でもいなければならない。難しいし時間もかかりそうやなあオイ。先は長えわ。やってみるんだけどさ。他人や環境に委ね過ぎんのもさ、美しくないし阿呆らしいもんだ。