やだね

「推し」

 

「推し」という概念がどうも苦手なんだ。なぜか?

 

好きなものを好きと共感しあえるのって嬉しいし、素晴らしいことだと思うのだけれど、

King Gnu良いよね〜井口マジ面白いし、ベースの人お洒落だし、ドラムの人もお洒落だし、常田は顔がイケメンで〜推せる〜〜」

みたいな常田の長所を顔だと言う女とKing Gnu好きなんだと話が合っても、共感なんてクソ程も感じないじゃないですか。King Gnuの魅力っていうかヤバさが何かって、圧倒的に作り込まれた完成度と説得力に「あ、俺たちはあいつ(常田)について行くしかねえんだ」って打ち負かされてしまって、気が付いたらもうヌーの群れの中・・・何が恐ろしいって確信犯でやってるのを隠そうともしないところですよ。何がKing Gnuよ。そういういけすかなさも、もうええ、もうええ、完敗です。ってなくらいのもの。ああいうバンドがアンダーグラウンドからいきなりポンと出てきちゃうトーキョーって街、凄いね。セルフプロデュースで好き勝手にやってバチボコに同業を駆逐っていうか、歯牙にも掛けない感じだったのを覚えてる。LOVE MUSICとか、何だったかな、TENDOUJIとかと一緒に出てた番組があったよな、バズリズム、いや違うな、忘れた。まあその中で、同じシーンで活躍する盟友って形で2バンドが出たわけだ。他にもいたかもしんないけど。それでTENDOUJIが、悔しいけど、King Gnuと俺たちは比べられない次元にいて、それがたまらなく悔しい。ムカつく。でも滅茶苦茶好き。って内容を涙交えて語ってたのだ。同世代のしのぎを削り合うべき相手にそんなこと言えないよ普通。実力を認めさせた上で好きと言わせる説得力。メンバー当人のみの実力が大いに作用されるインディーズというフィールドでは、比較対象がないくらい無双していたのだ。

話が脱線した。つまるところ俺は、同じコンテンツが好きであることそのものではなく、そこにある意志や背景やその理由を共感したいのだ。アーティスト自身はそうだが、お前のそれを共感し合いたいのだ。常田の顔が良いことは否定しない、が、それをおかずに共感し合うにはちょっと弱いし浅過ぎるよな。

そう、弱いのだ。「推し」という概念は。意思も背景も理由も。なぜ深堀りしないのだ。好きな人の好きなものって気になりませんか?どうしたら喜ぶか考えませんか?曲からメッセージのように聴こえませんか?コード進行、楽器の音色、歌詞、構成、メロディとか何でもいい、リスペクトを感じませんか?お金や時間を使うのはいいさ。アーティストも潤うし。でもその人を深く知ろうともしないでさ、金と時間使ったからそれでいいよね?って論理はさ、成り立つかもしれんけどちょっと危う過ぎやしません?なんか俺はパチンコでもしてる方がまだ自然な気がするよ。分かりやすく多幸感浴びれて、たまにリターンもある。

ファンが買い支えること前提で金をまかなってる阿漕な商売を「アイドル」と呼んだりするのだろうか。あかんのよ、「インフルエンサー」とかさ、この世で最もしょうもない職業の人だと思ってるからさ。職業に貴賎なしとは言うけどさ、アレだけはマジでいなくなっても誰も困らないと思うんだ。もう広告なんてYouTubeとマンガアプリで散々見飽きてるんだ。広告が服着て歩いてるようなもんだぞ?わざわざCM観たいか?

いや待て、わざわざ観たいCMを目指した結果がインフルエンサーなのか?ん?ちょっと存在意義出てきちゃった???やるじゃないか広告人。ひとつ勉強になった。自己解決しました。

あんな論理的でフィジカルの強い曲を作ってみたいものだ。最近はちょっとアレだけど。出来るならアーティストとしてのエゴをもっと存分に出したものを聴きたい。常田が一切人に媚びることなく俺についてこいと尖りに尖りまくる世界線も、あったら観てみたいなと思うがね。

取り立て

嫁と暮らし始めて早3年が経とうとしている。僕の気ままな1人暮らしライフを終わらせた嫁との甘い生活にまどろんでいる。小学生の頃から実家を出て暮らしていた僕は、誰かと同じ家に住むことに不慣れだった。なんか変じゃないですか?誰かと同じ家に住んでるの。パーソナルな空間の中に誰かがいるの。まあそのくらい当たり前だったんです。1人暮らしが。全然1人で旅とか、いや、お金ないからその辺の住宅街をチャリでさまようとか、でもこういう自分の当たり前を共有・共感できることがなかなかなくてですね。え、ないですか?オレンジの夕暮れに染まった全然知らん住宅街を通り抜ける時の、あのとんでもなく不穏でもの哀しいオーラを全身に浴びる心地よさ。泣けるんだこれが。不安で、縁もゆかりもクソもないのにノスタルジーで、孤独なようで、誰もが孤独でないことを改めてわからせてくれる。ふと我に返って安心する。ああ、俺は1人のようで、1人じゃない。ありがとうございます。こんな刹那的・衝動的・瞬間的なノスタル体験がな・ん・と!タダで!無料で!ちょっと時間とチャリこぐ手間があればできちゃうんですねぇ〜!金のかからない趣味はいいぞぉ〜!人の営みに金が関わるとロクなことの方が少ない!タダより高いものはない!ケチくさい嫌儲論で語ってるんじゃないですよぉ〜!

気持ち良くなれる手段、いくつ持ってますか?右手一本あれば十分だという殿方もいれば、棒一本あればという姫君もいらっしゃるはず。そんな話じゃない。男女の本質をひとつ話したい。男は何かを産ませる生き物で、女は何かを産む生き物だ、というのを聞いたことがある。なんだ下ネタか。ところが穴が、ち、あながち間違いでもないと思わなくもない。ん?どっちだ?だがその例えでいくと、人は男女ともにどちらかが欠けると何かを産み出せないのか?生産性がないのか?男同士は。女同士は。何も産み出さないのか?産めなくなった老人の存在意義とは?いかん差別的になってきた。しかしこの世は差別で出来ている。何も否定することなどない。平等に機会も能力も与えられるわけではない。だが、男にしろ女にしろ、人間はみんな何かを与え、産み出すことができる。与えられる人であれ。産み出す人になれ。与えられて当たり前じゃない。産み出して当たり前じゃない。優しく気前よくいこう。

魂が溶けるような

健康診断の結果で、たびたび「徐脈」って書かれるんです。書かれたり書かれなかったり。調べると俗に言う「不正脈」ってやつで、1分あたりの拍動が60回を切ってたり、トクン、トクン、ト、トクンみたいに、一定のリズムを刻んでいないとか、自分は毎分50回くらいで、すぐに危険がどうこうってより、とりあえず異常だから心の隅に置いといてねってな具合だ。心の臓だけに。

昔から胸の隙間、心臓のあたりがキュウゥゥンって苦しく痛むことがある。これもGoogle先生に聞いたら「肋間神経痛」ってやつらしくて、今すぐどうこう云々とやらpart.2ってなもんです。こいつらに因果関係があるのかはわからんが、僕の心臓はどうもリズムキープが出来ず、打つべき鼓動をすっぽかしたり、「苦しいよう、痛えよお」と泣き言まで漏らす始末。音楽を趣味とする人間の心臓としては極めて合っていないようだ。おかしいな、ドラムがどれだけ暴れて走ってもそれに対応できるスキルは持っていたと自負していたのだが。

今日、生まれて初めて占いとやらを体験した。タロットカードを使った代物だった。金田一のとある1話で「タロット山荘殺人事件」というのがある。例えばアルカナの「吊るされた男」や「タワー」や「風車」になぞらえて次々と人が殺されていくというストーリーだ。絞殺なり感電死なりね。犯人が「吊るされた男」の正位置をわかっていなかったってのがミソでね、本来は足を縛られて逆向きに吊るされてるのが正解なんだけど、死体は首を括られ、よくある首吊りみたいになぞらえていたんだよね。それで犯人はタロットを知らん人間や!ってので疑われちまうんだけど。

話が逸れた。とりあえず仕事について占ってもらった。また乗り越えなければならない問題が現れて、それにはとある周囲の人間が影響しているとのこと。またかよ。山と谷だらけじゃんよ俺の道程。しかし決してネガティブではなく、自分が納得してできる解決法を探していけば乗り越えられるのだとか。この占いの面白いというか興味深いのは、過去・現在・未来に現れる兆しを、道筋立てて解決に向かわせられるということだ。結果、妙に説得力のある解答に辿り着くし、その方法も、生まれた解に寄り添って考えることが出来る。素晴らしい。ちょっと感動すらしてしまったよ。

流れで結婚生活についても占ってもらってしまった。空恐ろしくなった。不安や不満は一つずつ排除してきたつもりだったが、俺の深層心理は大いに正直に、「ここにいますよ〜」なんて不満をタラタラに、心の水面に浮かび上がらせた。なんてツールだ。俺のオーラでも吸ってんのかこのカードは。このスピリチュアルな現象を論理的に片付けられる思考力は俺にない。はっきり言って動揺したし、あまり言いたくもなかったが、「たしかに、こんなこと思ってますねえ」なんて口にしてしまったのだった。

しかしながら、この悩みそのものにはカタチがあり、今まさに手にとれるほどの距離にもたげている。向き合えるのだ。その解決法も示してくれさえいる。これ、すげえわ。ちょっと弱ってる、悩みのある人間なんか易々と洗脳できちゃうぞ。う、言い方が悪かった。しかし意外にも、占いの手法そのものはアレだが、悩みへの回答に関しては、論理的に整合の取れる範囲で導きだせていた。すげえ!とか思っちゃった。うーむ、世の中には知らないことだらけ・・・

 

すべてが終わった後、俺の脳みそは溶けていた。魂さえ溶けてしまっていたかもしれない。すんげえ疲れた。ていうか今も。とりあえず悩みは忘れよう。明日考えよう。大丈夫、明日も休みだから。明日やれることは明日でも良いのだ。な。

あんたの全てを壊して

「趣味は何?」

そう聞かれて何と答える。困る。読書?うーむ、最近じゃよほど気が乗らないと読まないし。料理?毎日するには億劫だけど、時間に余裕があれば手間暇は惜しまない。おお、これは趣味と呼ぶに丁度いいのでは?

しかし初対面の人間相手に、僕の風体はどうも「料理」とか「読書」なんてイメージがつきにくいらしい。ついこないだウェディングプランナーに聞かれたんだ。ご趣味は?って。ひとしきり悩んで、

「・・・読書?」

と言うも「嘘ですよね?」と即答。なめんなよフランク女。

「・・・料理?」

「嘘ですよね?」

ナメナメやぞこんちくしょう。一個も嘘なんか吐いてないのに。本棚が3列埋まるくらいは持っとるわい。全部読んだかは知らん。部長に勧められてとりあえず買った自己啓発やハウツーの類はただのカサ増し。文字通りデッドストックと化している。

 

まあ、今の趣味はマンガだろう。先月までマンガアプリに月1万程度課金しつつ、週一でネカフェに通って気になっているものを新旧王道邪道問わず貪り読んでいる。紙では買ってない。買ったのはストッパー毒島くらい。巻数少ないしいっかーと軽い気持ちで。

中でも衝撃喰らったのがハンター×ハンター。モロ王道。恥ずかしながらこの歳まで読んだことがなかった。ふむふむ、ほうほう、うぅーむ、うおぉ・・・などリアルに声に出しながら読んでしまった。馬鹿みたいに字多い。銀魂より多い。情報量がエグい。これ本当に少年漫画か?

高校生の頃、友達から借りて読んだジャンプで流し読んでた記憶がある。シーンも断片的になんとなく覚えてる。キメラアント編はそのあたりを補完しながら読めたのでまた面白かった。

「脳みそクチュクチュやられてたの、お前だったのかよ・・・」

「あ、あの空からいっぱい降ってきたのは、このじいさんがやってたのね」

「だからゴンさんの髪の毛があんなんなってたのね」

 

「好きな悪役は誰?」

一回も共感してもらえた試しがないのだが、戸愚呂の兄貴がマジの本当に好きなんだ。弟はね、よく言われるよね。かっこいいもんねアイツ。唐突な幽白へのチェンジコート、許せ。

めちゃくちゃ嫌な奴なんだけど、実は〇〇な過去があったとか、飄々として掴みどころのないクールな感じとか、味方でいて欲しかったくらいアツくて強いやつとか、魅力的な悪役あるあるやね。でも戸愚呂の兄貴はちげーぜ。ただただ救いようのない「悪」そのもの、まじもんのクソ野郎なのよ。武道と共に魂も品性も売り飛ばし、見てるこっちが胸糞悪くなるくらいの煽り、実の弟に殴り飛ばされ肉片に。何十話後に輪切りにされた他人の頭の中から再登場したかと思えば、人気投票2位のイケメンに「貴様は死にすら値しない」とか言われ、自身の再生能力を逆手に取られてハメ殺される最期を迎える。いや厳密には死んでないんだけどね。

登場回数は多い割に、目立った活躍が少ない。たいがい強敵の側でひたすら煽り散らしてくる胸糞野郎。こいつが僕はたまらなく好きなんだ。ピカレスクロマンなんてクソ喰らえだ。悪は純然たる悪でいい。読者のヘイトを一心に喰らい、ボス敵の前のかませ犬で儚く散る兄貴。主人公パーティでさえ殺すつもりで描く冨樫に2回も殺されてる。2回にわたってだぞ。こんなヤツそうそういないぜ。まあビジュアルもわりかし好きだ。後期レッチリのジョンフルシアンテみたいじゃん。ロン毛パーマにジャケット姿で彫りの深い感じ。いやたまらん。

ああ、これが語りたかったんだ。満足だ。共感は求めません。ご静聴、ありがとうございました。

カレーの匂い

カレー弁当や!いうて、昨晩残ったカレーを直に弁当箱に詰めて持っていくと、普通に洗っても匂い取れませんマジで。特にタッパー系のプラスチックのやつ。色も落ちにくい。ラップで容器をガードした上で詰めるのが吉。これ豆です。

 

ノスタルジーを感じたいと思うのは、ちっとも不自然なことではない。ただあんまり意味はないがね。見るよりも触るよりも、もっとも強く感じられるのは匂いだ。小学生の頃、通学路に漂っていた、甘ったるいようなカビのような異臭。あれと同じ匂いがする場所をこの間見つけた。会社の危険物倉庫だ。普段厳重に鍵をかけてあり、どんなヤバいブツが入ってんのか見当もつかなかったが、社員でかつ、何かしら目的があれば入ることが出来る。その機会を偶然にも賜り、かの倉庫の鍵を手に、足を踏み入れたのだ。

扉を開けた瞬間、僕の脳みそは小学3年生に戻った。あの匂いだ。目的のブツを取りに来たことも、運搬用員で連れてきた後輩の存在も忘れ、僕は神奈川県相模原市のとある十字路に、ランドセルを背負って立っていた。車がひた走る16号線のその上、歩道橋の真ん中から見下ろしていた。この階段を下りてすぐの角、いつもシャッターの降りている謎の店。一帯を取り巻く謎の匂い。何の店かは知らない。興味もなかった。僕の興味あったのはブックオフか、駄菓子屋か、ジャスコのおもちゃ売り場だけだったから。

危険物倉庫の扉を半開きに固まっている僕を、後輩が怪訝な目で見ていた。しまった、ここは大阪のようで大阪でない、山と畑に囲まれたど田舎だ。ランドセルなど背負っていない。作業着に身を包んだアラサーの男だ。自我を取り戻し、目的のブツである「白塩酸」を後輩に持たせ、倉庫を後にした。

「なあ、あそこの匂いさ、俺の小学生の時の通学路の匂いすんだよ」

「はあ」

何言ってんすかと言いたげな感嘆詞を発し、興味のかけらもなく、彼は工場への歩みを進めた。

なんであの通学路は、あんな危険物倉庫の匂いがしてたんだろう。中で怪しげな実験や研究でもしてたのだろうか。もしかして相当に面白い発見なのではないかと、現代社会の師であるグーグル先生に聞いてみることにした。とりあえずあの付近の地図を拡大してみよう。

『〇〇仏壇仏具店』

仏壇仏具店?はあ・・・そういえば何か金ピカのキラついたデカいものがあったような気もする。しかしなぜ仏具店に甘ったるいカビのような匂い・・・?

「なあ」

「はい」

両手に20kgずつのポリタンクを抱えた彼が、スマホいじってないで片方くらい待てよと言わんばかりの声色で返事をした。

「仏壇仏具ってさ、あんな匂いすんのかな?」

「はあ、するんやないんですか?カビっぽい辛気臭そうな感じ」

「せやなあ」

会話は終わった。別に面白くも何もなかった。僕はまだしも、両手合わせて40kgの重量物を持たされた挙句、ノスタルジーに浮かれた上司のしょうもない昔話を聞かされた彼の不憫さを思った。呪われてもおかしくないなと思い、片方のポリタンクを持ってあげると言うと、もういっすよと工場の中へ入っていってしまった。5mだけでもちょっとは負担の軽減になるじゃないか。意地っ張りなやつめ。

その呪いのせいか、今週はずっと寝付きが悪い。眠い。寝ぼけた頭で、別段食欲もないまま弁当を貪り、加熱式たばこの点滅を待っている。この話に続きがあるとすれば、彼の呪いの手段だとか、仏壇仏具の金メッキの精製にとある薬品が必要だったとか、寝ぼけて加熱式たばこに火をつけそうになったとかその類だろう。なんだかお腹も痛くなってきた。今日はこんなところです。

カレーの匂いもやっぱ、懐かしいとかそんな感じするよね。

140文字で簡潔にまとめられた情報

文章の基本は「わかりやすさ」である。「読んでわかる」のでなく、「見てわかる」ようにしろ。良い文章=わかりやすい文章である。と、口を酸っぱくして言われた学生時代。マスコミ志望だった僕は、とある名ジャーナリストの「魂を削って書いたようなアツい文章」に憧れ、それじゃあかんのや!これしかない!と血を滲ませて断言するような論調を好んだ。小論文の授業は僕のコラム発表会。テーマはだいたいが時事ネタだったので、新型インフルエンザ(懐かしい)や、WBCでのイチロー(伝説)がどうたらを書いた記憶がある。年齢がバレそうだ。精神(こころ)がパンクロックだったので、まず新聞やニュースでの方向性の批判から入る。まず否定から始まる。起承転結などクソ喰らえ。とりあえず否定して、自分の感情を吐露するように書き殴るのだ。でもなぜか先生は、僕の駄々文をよく褒めてくれた。褒めた上で赤ペンはやたら引かれるんだけどさ。でも嬉しかった。授業中に完成させて添削持ってくる人が僕しかいなかったからかもしれない。その辺は一生懸命なやつだったのよな、僕。

しかし現実世界では口下手で、まともな自己表現が出来なかった僕。mixiやモバゲーの日記では随分と多弁な僕を同級生は「調子乗ってんじゃねえ」と蔑み、罵った。「現実でやってみろや」。もっともだ。あの頃の日記はすべて削除してしまったが、感じた悔しさだけは消せずに引きずっている。未だにそうだもんなあ。言わなきゃいけないことをぐっとこらえてしまうから蟠りになるのに。言いたいこと言って生きていきたいよ。ネット弁慶など卒業してしまいたい。

というわけで、今言いたいことを今しっかり表現したいと思います。風俗の話をします。

これまでの記事では、「ピンサロ」、「ホテヘル」、「新地」といったエロ産業の業態を紹介してきたが、本日は風俗においてよくいわれる“当たり”や“外れ”について説明していきたい。男達は何をもって彼女らに当たり外れを付けているのか。顔か?スタイルか?もてなしか?

初めに前提として、嬢のレベルは外見・内面・サービス共に、「払った金額に比例する」ということを覚えておきたい。対価に見合った結果がしっかり出る。僕の知り合いにTという「激安ホテヘルで風俗嬢ガチャを引く」のが趣味の人がいる。一度一緒に深夜の梅田でエロを求め、60分8000円のホテヘルに入ったのだが、正直思い出したくないし、なんなら「二度とホテヘルなんて行かねえ」と思うほどのクソ体験をした。思い出しながら書いてみるので、“外れ”の一例として読んでほしい。

ミナミでTと大いに酒を喰らい、ほら酔った僕は既に終電がないことに気付く。俺ん家泊まってけやとのTの申し出に乗り、ほな、まだいけるわなとコンビニで酒を買って、ガードレールに寄りかかってエロ話に花を咲かせ、件の「激安ホテヘル風俗嬢ガチャ」を引いてみようということになった。マジで失礼だなこのゲーム。彼のホームグラウンドである梅田なら、まだ開いてる店を知っているとのことで、タクシーに乗ってキタへ。車が動き出した瞬間に気持ち悪いと彼は言い出し、梅田へ着いた瞬間に彼は一発排水口向けてゲロった。あースッキリしたわ、もっかいスッキリしに行こかーゆうて、やまかしいわ。

ネットで調べると、3つほど営業中の店が見つかった。その中で1番安い、60分8000円の店へ向かう。ボーイさんは写真を3枚出し、この子たちが出勤中ですと言う。僕は25歳でGカップの茶髪ギャルを。彼は42歳(!)の女性を選んだ。冗談かと思ったがマジだ、この人は。待合室に入った瞬間、彼は僕にこう言った。

「あんなあ、ゆきち、こういうとこの巨乳は地雷やで〜」

嘘だろ、いや、そもそも、42歳をわざわざ選ぶって何??????どゆこと??????頭の中に「?」を満たしながら、嬢の到着を待った。

カーテンの向こうには、茶髪の朝青龍(♀)が、あくびしながら腕を掻いていました。

最悪や、楽しかった今日の夜が台無しだ。25歳?明らかに30は越えてる。肌汚ねえ。てめえ絶対さっきまで寝てたろ。髪の毛ちぢれてるし、それに、このお腹、妊婦さんなんじゃねえかと疑うくらいの肥満体型。息子がやる気を失い、下腹部が気持ち悪くなるのを感じた。え、僕、今から、この人と、するの?

ホテルに着き、とりあえずベッドに座った。嬢も座り、ぼりぼりと腕を掻きながら「ねむい、だるい」としきりに繰り返し呟いている。僕の側頭部に血管が浮き立つ。落ち着け、ここでイライラなんてしたら二度と息子がやる気になどならない。もう金は払ってしまった。しかもあのボーイ、深夜料金やら指名料とかいって、合計で10500円も。とりあえずあの対価を回収しなければならない。どうすればいい?まずはこの嬢をやる気にせねば、サービスどうのこうの言ってられん。おそらく年齢は僕の少し上くらい。見た目的に多分この辺が好きだろうと、初期エグザイルの話を振った。

「あ〜懐かしい〜!そう、好きだったな〜清木場〜」

よし!ということは・・・!

「そうそう〜!今なんてもう何人いるかもわかんないし〜あの頃は良かったナ〜」

完璧に彼女の心を掴んだ僕は、とりあえず服を中途半端に脱がさせ、豊満なバストだけ露わにし、たゆんとしたお腹は服とシーツで隠した。これなら・・・!そう思った瞬間に息子が息を吹き返した。逆転だ。俺ってばもう、この色男!安くないお金払ってまで俺は何しにきたんだろうと自問の横槍が入るが、今はこの不良債権を回収せねばと、目の前のエロに一点集中する。息子に顔を近づけた彼女から、それなりのやる気が伺えた。がんばれ!がんばれ!名も知らぬ嬢よ!

全てが終わって、Tと待ち合わせたコンビニで水を買った。一口含んで、一仕事終えた疲労感とともにベッ!とアスファルトに吐き出す。Tが来た。もう絶対このガチャは引かねえ。なんならホテヘルおもんねえ!無駄金でした!と、矢継ぎ早に僕は捲し立てる。

「そうか〜俺はB専やからな〜結構満足したし、当たりやったわ〜」

ええ、あんた、42歳の嬢をわざわざ指名して・・・ええ・・・?

「歳いった嬢はな〜逆にあんま外れないんよ。高齢ってだけで店からの信用は得られにくいし、普段指名もほぼないから、指名したら一生懸命やってくれるで〜。こっそり本番もさせてくれたしな」

は、はあ・・・勉強になります・・・。

「ま、下から見た顔は、オカンとやってんか思ったけどな。ははははっ!」

その後、Tの家に向かい、時計を見たら朝5時。まあまあ、パチンコでも打って気ぃ晴らそうやと、彼は言う。4時間ほど目をつぶって、開店から並んで打ったパチンコで、1万円負けた。財布も心も、ただただ寒い・・・。夜の世界には、僕の知らないことがまだまだいっぱいあった。

 

これはいけない、“外れ”のエピソードだけで終わってしまってしまいそうだ。やはり何でもそうだが、投資をケチれば、それなりの結果しか生まれない。容姿が悪いのはまだしも、サービスが悪いのは本当に損した気になるし、気分が悪くなる。

しかしこれは、ある必然に則った結果なのである。女性がそういう店に入店するにあたり、まずその容姿に見合ったレベルの店舗に入れられることが大半だ。そこで良いサービスが出来て、それなりに指名が取れれば、さらにステップアップしていく。店にも重宝される。より稼ぎの良い高級店への斡旋もある。反対に良いもてなしが出来ない、容姿が良かろうともサービスの悪い嬢は固定客が取れない。クビにされ、入店ハードルの低い薄利多売の激安店へ行かざるを得なくなる。激安店にも良い容姿の嬢が一定数いるのはこういう理屈だ。もちろん例外はあるだろうが。

キッパリいうと激安店は、性のプロとしての意識が低い者の行き着く先なのだ。何か理由があるからそこにいるのだ。そんな掃き溜めのような場所で働く彼女らもまた、なんらかの事情があってそこにいる。生きた人間である。そう思えば、この僕の苛立ちも喪失感も、多少は救われる、気がする。いや、やっぱり僕は、そこそこお金出して良いサービス受ける方がいいや。せっかく楽しみに来てるんだもんね。

反対に高級店ってのはどうなのか?僕は高くて3万円程度の準高級店?くらいのところしか経験がないが、今度はそれについて書いてみようと思う。今日はもう疲れた。思い出すだけで疲れた。また、エロの世界で会いましょう。おやすみなさい。

油断すると過去の自分語りを始めてしまうクセがある。過去の経験とは役立ちそうで役立たないものだ。人に向けて意気揚々に語り出してしまうのは憚れるもの。しかし俺はわかっている。こんな駄文そのもののブログなんて、誰に向けて書いているのか。1番の読者は誰なのか。それは自分自身に他ならない。1番読んでるのも自分だと思う。どれだけ恥ずかしく拙い文章でも、当時のことを反芻しつつ、見つめ返す機会となる。意義あるものだ。

今日は「最近どうしてんのかなあ」「会いたいなあ」と思った人たちをつらつらと書いてみたいと思う。昨今の情勢じゃ遊びに行くのはおろか、飲食を共にするのも厳しい。思い出を掘り起こしながら、再びの邂逅を思い馳せてみましょう。

 

・レナード

僕の両親は転勤族で、実家どこ?と言われてもどう答えようか考えてしまうくらい全国を飛び回ってきたが、もっとも居住期間が長かったのが、神奈川県の相模原市だ。3歳から11年間住んでいたので、幼少期の大半をここで過ごしていたことになる。

住んでいたマンションの横には小さい公園があって、暇な時にそこに行けば、近所の知ってる誰かしらがだいたい遊んでいた。そこで出会ったのがフィリピン人のレナードという同い年の少年だった。彼は単身赴任の父親と2人で、僕の隣のマンションに暮らしていた。しかしいつでも会えるというわけではなく、部屋のチャイムを鳴らしても反応がないことが多く、彼と遊ぶときはだいたい、彼から僕の家へ訪問してくる時だけだった。

肌の色も主言語も違ったが、彼とはなぜか妙にウマがあった。よくマンションの廊下でミニ四駆を走らせた。漫画の真似をして、水たまりを横切って水しぶきをあげながら走らせあったものだ。コースを持っていなかった、野レーサーである僕達の主な遊び場は屋外であった。ベイブレードも公園の水道?の石で出来た囲いを使って遊んでいたように思う。

彼は温厚かつ、真面目な性格だったと記憶している。彼と何か悪いことをしたり、誰かに怒られたことは一つもない。お父さんが相当厳しい人だというのを聞いたことがある。会ったことは一度だけ。彼の家で冷凍のラズベリーをシャリシャリ食ってた時にばったり帰ってきたのだ。なんでそんなの食ったんだと、外国のチョコレートをもらったような気がする。味は・・・覚えてない。20年以上前だしな・・・

彼とさよならの一言もないまま別離に至ってしまったのが本当に悲しい。僕は4年生から全寮制の大阪の学校に入ることになり、転校することになった。しかしその頃、彼は父親についてフィリピンに帰っていたらしく、一言も交わす間もなく僕は大阪に旅立ってしまった。その何年か後、家にレナードが訪ねてきたと母から連絡があった。僕は大阪で寮生活を送っており、帰省できるのは長期休みの間だけ。部活もやっていたので、自分の家に帰れるのはごく限られた時間だけで、その間にレナードと会える機会はとうとう作れなかった。

14歳の時に父はまた転勤になり、今度は愛知県の豊田市に移り住むことになった。もうレナードがあの相模原の家を訪ねてきても、そこに僕はおろか僕の家族もいない。彼に寂しい思いをさせてしまったのではないかと思うと、ぎゅっと胸が苦しい。

数年前、ふとレナードのことを思い出し、母に連絡先でも知らないかと聞いてみた。その時初めて知ったことがいくつかある。彼の父もまた仕事の都合で日本とフィリピンを行き来しており、彼もついていっていたこと。日本の学校に馴染めず、遊べる友達は僕しかいなかったこと。連絡先は知らず、知る術もないこと。

彼には謝らなければならないことがある。彼のことは好きだったし、たしかに仲良かったが、数ある友達の中の1人という関係のようにしか思っていなかった。自分勝手なエゴまみれの理屈で、彼には本当に申し訳ない。彼の思いを考えると、心の奥がぎゅっと締め付けられる気分になる。

なんとか彼にまた会えないものだろうか。今どこにいるのだろう。何をしているのだろう。母国で働いているのだろうか。フィリピンの空を想う。見える景色は違っても、同じ空を見上げているのだろう。あるいは彼も父親のように、日本に来ていることがあるのかもしれない。あなたの周りにフィリピン人の知り合いなんていませんか?もしや、そいつはレナードってな名前じゃありませんか?もしまた会えたら、ミニ四駆ベイブレードじゃなくて、冷えたビールでも酌み交わして笑い合いたい。フィリピン人のレナードって、知りませんか?

 

・白井

白井ともっとも遊んだのは小2の頃。クラスが同じで、席が隣になることが多かった。

前述のレナードとは真反対の、悪友だった。授業中は僕とともに落ち着きがなく、隣のクラスに遊びに行ったりして、よくそこの担任に怒られたのを思い出す。朝礼で「みんなのうた」的な、きわめて道徳的な歌をみんなで歌うという行事があったのだが、僕と彼は歌詞の一部分を「鼻毛」や「うんこ」に替えて歌っていた。“はーなげ!はーなげ!はーなげを見せて〜♪”という具合に。

僕が転校してしまってからは、ずっと疎遠になってしまっていたが、18歳の時に、小学校の同窓会で久しぶりに彼と会った。お互いパッと見てすぐ「あ、コイツだ」とわかった。僕はほとんど変わっていなかったらしい。彼は金髪にジャージという田舎ヤンキーの正装で現れており、今何してんの?と言うと、いやあ、とちょっと口籠もった後に、暴走族やってる。と彼は言った。僕は当時大学生で、小中高一貫で育った筋金入りの温室育ちであったため、彼のような存在が新鮮だった。こんなに違うとはなあ、と彼は言ったが、無勉強のFラン大生が彼に対して特に優越感など芽生えるはずもなかった。高校辞めて鳶職になり、そこそこの給料を貰って楽しくやってるそうだった。受験に失敗して大学に入った僕は、当時それはそれは腐っており、彼の笑顔が眩しく感じたのをよく覚えている。

彼ととても久しぶりに話すはずなのに、懐かしいとかそんな気持ちよりも、安堵感というか、彼がそこにいて、ドリンクバーのグラスを持ちながら僕と話しているのが、とても自然で、至って当たり前のことのように感じていた。何も変わっていない。友情を確かめ合うような言葉もなく、最近どうなの?と、近況を報告するでもなく、「あいつに金借りててさあ、今会いたくないんだよ」って、僕の仲良かった友達のことを話したりなんかしていた。

時は進んで、今から1年前、彼の訃報を相模原の友達から聞いた。自殺。薬を大量に摂取して、彼は死んだ。一瞬胸がずくんとして、時が止まった。葬儀もなく、誰に看取られるでもなく、彼はこの世から去っていった。別世界の出来事のように、漫画みたいに思えて信じられなかった。でもこれは現実らしい。なんてことだろう。寝耳に水の知らせだった。

白井は中学の頃から不良グループに属して、他校のヤバいヤンキーともつるんだり、“そういう”道を進んでいたらしい。僕は彼と同じ道を進んだわけでもなかった。自死を考えるほどの、彼の苦しみさえ知らなかった。それが歯がゆくて悔しくて仕方なかった。

レナードも白井も、正直今となってはどうしようもない、会おうと思っても叶わぬ人たちとなってしまった。今僕の右親指を突き動かしているのは、後悔の2文字だけである。会いたいなあと冒頭で言ったものの、マジでどうしようもない2人を取り上げてしまったことを反省している。存命で、連絡も普通に取れるけど会えていない人もいるので、次はそういう人たちを取り上げてみたい。