何処へ

初めての喫煙はいつだったか。

マルボロメンソールライトという、白にエメラルドグリーンの装飾が入った、マジでめちゃくそ美味いやつ。未だにたまにもらいタバコしては「いっちゃんうめーわコレ」言ってます。ほなそれにしたえーやんという話なのですが、自分、病的な飽き性でして。一ヶ月も同じタバコ吸ってると、ただケムリ吸ってるだけ、というか。実際そうなんですけど。こう、味気がなくなってくるんです。味わうんじゃなくて、ただ欲求を解消してるだけ。ニコチンの中毒症状にあてられてるだけのようなあの感じがなんか嫌でしてね。どうせ吸うならちゃんと味わいたいじゃないですか。仕事中イライラせかせか喫煙所に立ち寄って、範馬勇次郎ばりにジュウゥ〜ッッと2本ばかし5分で吸い切って、またイライラしながら仕事に戻るような、あれ絶対身体にも心にも悪いじゃないですか。燃え尽きてゆくタバコにも失礼だ。ただのニコチン切れを満たすためだけに身体悪くしてタバコ吸うってのは、マ・ジ・で害悪でしかないと思う。のたうち苦しんで早死にするリスクを重ねてるだけだ。

身体に良いお菓子なんてないように、時には化学調味料まみれのラーメンが食いたくなるように、脂とカロリーまみれの牛タンを焼肉のスタートに欲しくなるように、身体に悪いものってだいたいが美味いんだよ。んでまたユウジローのとっつぁんがさ、「毒もまた喰らえ」って言うんだよ。味覚オンリーで言うならタバコなんてただの有害ガスで、焦げ臭くて美味いわけがないんよ。焼き網の隅で焦げたハラミの残骸食ってるのと変わらんのよ。

喫煙者は味覚狂うって言うじゃん。本当に狂ってるんだよ俺達の味覚は。1年ほど禁煙していた時期があったが、メシがうますぎて15キロ太って、持ってた服ほとんどが着れなくなるような事故が起きたんだ。ほんで禁煙失敗して吸いはじめたら飯がまずくて食わなくなる。結果元の体型に戻る。欲望なんて少ないに越したことはない。4つ目の欲求をわざわざ作る必要など、本当はどこにもないのだ。

だがそれでも俺達はたばこを吸う。あいつは、たばこは、俺の喜怒哀楽を近くでずっと見てきたから。美味い不味い以外の感情と直結してしまってるのだ。うまくいかねえ、どうすりゃええと押し寄せる不安。飲み屋で咲かせた与太話。その近くにはいつも、たばこがいたんだ。薬理的作用を求めてたばこを吸っちまった人間が、こいつから離れるには相当な覚悟がいる。恋人であり、友でもある。これは酒なんかも同じこと言えるだろう。禁煙ブームみたいになってるけど、依存して危ないのはあいつも一緒だぜ。副流煙よりモラル失った酔っ払いの方が不快だな俺は。僕個人が酒弱いひがみもありますハイ。すみません。

そんなわけで、未だに禁煙なんてクソ喰らえだというスタンスを崩せずにおります。匂いが深いだという意見ももちろん理解できる。だから扱いめんどくさくて味気少ない加熱式たばこなんて吸ってるんだけれども。たまにはさ、慣れ親んだセブンスターをスパーッとやりたくなるよね。美味いんですよ。お菓子食うとか酒飲む感覚と一緒。味気はある。百害あって一理あり。たばこ吸ってたから出来た縁も多々ある。はからずも心の拠り所にさえなってしまっている。禁煙なんてクソ喰らえさ。たばこが違法になるまでか。一箱千円になるまでか。行こうぜ。白煙立ち昇る、高みのその先へ。